学生が就活を進める中でどのような基準で会社を選んでいるのかは、学生自身だけでなく社会全体の関心事であろうと思います。
今回は、最近の就活生が会社を選ぶ際に何を判断軸にしているのかについて、就活スタイルの移り変わりや周囲の就活生から聞いた情報も参考にしつつ考えていきます。
昔は給与・年収で会社を選んでいた?
程度の差はあると思いますが、大まかに見た場合、かつての就活はお金や地位が基本軸であったものと思われます。
インターネット普及前は、今よりも会社の情報が少なくアクセスもしにくい時代でした。大学に届いている企業からの募集要項や就職情報誌はあるものの、掲載内容は限られるので、企業見学や先輩社員を通じてしか、会社の文化や仕事内容を知る機会がありませんでした。また、今と比較すると新卒年収はほぼ横並びで、メンバーシップ型雇用しかなかった時代でもあり、新卒就活生は入社後に何をするか明確にわかった状態で就活するわけではありませんでした。
そのため、社格の良さ(大企業か、上場しているか等)や、平均年収の高さなどが判断基準にならざるを得ない状態だったと考えられます。
現在の就活は「自己実現」へ
インターネットが登場してからは、Webサイトで多くの会社情報に簡単にアクセスできるようになってきました。スマートフォンが普及することで情報化社会に拍車がかかり、就活市場もその例に漏れず大量の情報が出回るようになりました。
労働市場の流動性が増し、転職も当たり前の時代になりました。これにより、就活生は特に出世に対する欲求が昔より少なくなったように思います。筆者が周りの友人と会話する中でも、就活の時点で「このくらい勤めたら転職は視野に入れたい」「ここに入ったとしたらこのようなスキルを身につけて次はこんな業界にいくかもしれない」という話はごく当たり前になされており、ファーストキャリアを決める際に将来的に転職する可能性(どのような業界でどのくらいの規模の会社・組織に何年後に転職するか)を見込んで就活をしています。一つの会社で最後まで昇進を目指すという人ももちろんいますが、就活時点では転職を通じたキャリアアップも可能性の一つとして念頭に置かれています。
最近の就活生は、お金には以前(バブル景気の光景を思い浮かべながら書いています)ほど執着がないように思います。ただ、当然全くなくなったわけではなく、「高給で職場がホワイトであること」という軸で就活をしている人は筆者の周りでも一定数いますし、同一業界の複数社で迷った場合などには待遇の良さが決め手になることも多いでしょう。
最近の就活生にとって大事なものは自己実現、すなわち企業理念に対する共感や、自分らしさを保った状態で働ける職場があるかを重視する考え方になっています。
収入や肩書よりも「自分らしさ」が大切
なぜこのような傾向にあるのでしょうか。筆者の個人的な考察になりますが、社会が成熟した段階にあるためと思われます。昔は高水準の経済成長や男女の役割分担などから、何よりも労働することがまず推奨された社会でした。他方で、現在は日本の経済成長率は停滞状況にあり安定成長に入るとともに、女性の社会進出や家族での時間を大切にする価値観の浸透によりWLB(ワークライフバランス)の考え方が定着しました。現在では、収入や肩書といった社会的地位のみにとらわれず「自分がしたいことを、したいときに、したい分だけできる」という「自分らしさ」の実現がより大切にされます。お金を稼いで地位を得ることだけを重視せず、より広く自分にとっての幸福を追求し、それを外から邪魔されないことが大事なことだと捉える社会へと変わってきたのだと、筆者は考えます。
男女共同参画社会の実現、さらにはコロナ禍を通じて、リモートワークや産休育休が働きやすさにつながることの重要性も社会的に認識されるようになりました。従業員がライフステージに合わせて働き方を選べるか、職場環境の整備に取り組んでいるかは、就活生の目から厳しく評価されていると考えたほうがよいと思います。
今回は最近の就活生の会社選びについて書いてみました。
会社選びの判断基準は人によって異なりますが、大まかな傾向として、最近の就活生は自己実現できるか、自分らしくあることができるかといった価値観を重視するように見えます。